トセ部隊を偲ぶ詩歌

16.トセ部隊を偲ぶ詩歌
    命賜わりて       故 荒張千五百曹長の譜
             いのち 賜わりて
   あの初陣は   漢水渡河戦 勝ち名乗り
     遥か沙荊の 宜昌まで  漢宜街道 西東
       沮水の流れ 太山廟   わだちの跡は トセ部隊
         荒張曹長の   戦自慢は 花吹雪

   あの激戦じゃぁ  敵兵の強さを 見たけれど
     俺は頑固に生きている  今日の点呼も異状なし
        声高らかな 砲兵歌    戦い慣れた トセ部隊
          荒張曹長の  顔を見てくれ 鬼も泣く

   あの作戦は       湘桂公路が 炎を噴いた
     人馬が叫ぶ 生き地獄  澱水すくい 飲んだのも
        死力尽くした 進撃も  血の汗絞る トセ部隊
          荒張曹長の  燃えた車両が 恨めしい

   あの戦争じゃぁ      若い生命が はたらいた
     涙こぼして語ろうよ    平成ならば いまにこそ
        昭和の武勲よみがえれ   永遠に輝け トセ部隊
          荒張曹長の   滾る想いを 誰か知る

          平成四年六月二十八日   水戸  保科 博

    故 久保田朝久氏を偲び…遙かなる昔日を想う

    トセ部隊        叙情譜
  戦争の渦に捲かれりゃ    生きちゃ踏めない 故国の土
     あきらめきれない      虚ろな声が 気にかかる
      あれが滋河市か金沙舗か  朧月夜の 歩哨線
         風も啼くよな太山廟    あゝ… 沙荊地にゃ春はない

  忍び寄る敵兵を迎撃えりゃ 大気にかすむ 沮水河
    そぼ降る氷雨       白い吐息が 頼もしい
       小雪ちらつく文峰塔    明けの分哨 河溶鎮
        添い寝の銃も凍りそう   あゝ… 荊襄の掃討戦
   岳州の 空を震わせ    十加を狙う敵機がきた
    唸る爆音         輸送船が危ない 洞庭湖
      真夏の死闘  岳麓山    堅い砦の 衡陽城
        飢えも渇きもなんのその  あゝ… 桂林の砲撃戦

  戦争の 傷に哭くなよ   転進だから 気負い立つ
      目指せ上海        修羅場をくぐる 二千粁
        襲う敵機が憎らしや    明日の旅路を 祈ろうよ
           見よ! 十加 我らこそ   あゝ… 栄光のトセ部隊

    元戦友 久保田朝久氏の訃報に遥なる壮丁時代を懐旧する

                    一九九二・七・三   保科 博

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